博士課程に進学して2年半が経ちました。実際に研究活動を進めるにつれて、進学前に思っていた博士課程の認識との相違がわかってきました。
結論から言うと、以下の3点です。
・博士課程は、勉強するところではなく、研究するところ
・研究とは、未開の地を開拓し、そこに知見を積み上げるようなこと
・どこに未開の地があるのかを知るために勉強が必要(情報の粒度に応じて教科書〜論文調査)
博士課程は勉強するところではなく、研究するところ
会社で音の認識技術の開発に携わったことをきっかけに、人工知能や音響信号処理に関する知見を深めたいと思い、博士課程に進学しました。
【死ぬ前に後悔すること】社会人博士に踏み切ったきっかけと後悔しないための自己分析 - 働きながら社会人博士を目指す企業エンジニアのブログ
以前からおぼろげに考えていた、「人の感覚をアルゴリズムで再現し、人の役に立つ研究」を目指すため、自分自身でやりたい仕事ができる知見を深めるチャンスだと思ったからです。
しかし、進学時点でははっきりと認識していなかったのですが、博士課程は論文を投稿することで、学位がもらえるところです。
授業を受け、期末テストを受けて単位をもらうものではありません。
研究をするためには勉強が必要であることは間違いないかもしれませんが、勉強と研究の違いをはっきりと認識しておく必要があると感じました。
研究とは未開の地を開拓し、そこに知見を積み上げるようなこと
では、研究とは何なのか。たった2年半の経験で語るのもおこがましいですが、
「未開の地を開拓し、そこに知見を積み上げるようなこと」
じゃないかなと思っています。
例えば、私のように、「人工知能や音響信号処理を研究したい!」と思ったとしても、それは、「アメリカを旅したい」と言っても、アメリカのどこよという話になるのと同じように、もっと具体的に目的地を考えなければいけません。
「じゃあ音声認識の認識率を高める研究がしたい!」と、多少絞ったとしても、まだ荒いです。
仮に、「ニューヨークに行きたい!」と言っても、ニューヨーク自体は未開の地でも何でもありません。むしろ世界一メジャーな都市です。
ニューヨークで何をどんな角度で見ていくのか、さらに事細かに視点を分析していかないと、研究にはなりません。
以下の図は、ML, DM, and AI Conference Mapから引用したもので、人工知能関連の国際学会をマップにしたものです。
人工知能というだけでも、これだけたくさんの分野があるので、未開の地を探しに、自分の興味のある分野を絞っていきます。
ML, DM, and AI Conference Mapから引用
どこに未開の地があるかを知るために勉強が必要
分野をある程度絞ったら、未開の地を探すための勉強として、教科書と論文を読む必要があります。
まず、ニューヨークの例で言うと英語のようなもので、その分野で広く使われている共通言語がわからないといけません。
例えば、音声認識に絞ったとしたら、音響信号処理の基礎であるフーリエ変換などがそれにあたり、こういった基礎理論を理解するために教科書を読む必要があります。
次に、方言やローカルルールのような、ある分野の特定の領域に関する情報を得るために、論文を読む必要があります。
ガイドブックに載っていないような、ローカルなお店を探すのが大変なように、まだどこの論文にも載っていないような未開の地を探すのは大変です。
教科書のように、長い歴史の中で体系化されていないので、世界中の研究者たちが投稿した論文をたくさん読む中で、未開の地と思われるところを絞っていきます。
当然、それなりの本数の論文を読む必要はありますが、すべての論文を読むことはできません。
自分の中で仮説を持って論文を検索し、DeepLのような翻訳アプリも活用しながら、トレンドを探っていくことが大事になります。
まとめ
勉強と研究の違いについて、自身の研究テーマを決めるに当たって、未開の地はどこにあるのか?という観点で書いてみました。