博士号に興味はあるけど、お金もかかるし休日も犠牲になるし、そもそも取ったところで意味があるのか?など、いろいろ不安に思うかと思います。
私は幸運なことに博士号を取得することができ、それから数年が経ちましたので、博士号を取得して何か変化があったのか?その後何をやっているのか?という点について、私の体験談をお話したいと思います。
博士号取得による変化① 基礎研究所への異動
厳密には学位の有無は関係ないのですが、プライベートな時間を使って大学に通っているというやる気とそこで培ったであろう専門性を認めていただき、社内の基礎研究部署に異動させていただきました。
もともとのモチベーションの一つが、仕事でもっと研究的なことがしてみたいということだったので、この点は非常に大きな変化でした。
これまでは、あくまでも学生として論文を投稿していたのに対して、会社の業務として論文を投稿するようになったので、プロの研究者として一つ世の中に残すことができたということで非常に嬉しかったのを覚えています。
もちろん、プロと呼ぶにはまだまだですが、学生の頃のように学費を払って論文を出すのではなく、給料をもらいながら論文を投稿できたということに一つ成長を感じました。
また、研究を行う環境としても、それまでは所属する研究室に閉じた環境で研究を進めていましたが、指導教員からの紹介もあり、様々な大学とのネットワークも徐々に拡大していき、いくつかの大学と共同研究もできるようになってきました。
博士号取得による変化② 論文投稿以外の対外活動の増加
完全に予想外の嬉しい出来事だったのですが、学会や勉強会といった対外的な活動も少しずつ増えてきています。
①Teck talk登壇
社会人博士時代に学会で知り合った研究者の方から、有志の勉強会にご招待いただき、自身の研究について発表させていただく機会をいただきました。
学会や研究会での招待講演ほどかっちりしたものではないですが、業界で有名な方がたくさん参加されている会だったので、非常に光栄に思いつつもめちゃくちゃ緊張しました。。
オンラインですが200名ぐらいの方に聴講していただき、大変貴重な経験になりました。
オンラインだからこそこれほどたくさんの方に聞いていただけたという面はありつつも、対面で知り合いになれなかったのは少し残念でした。
②国際学会でのワークショップ主催、Session chair経験
完全に指導教員のサポートのおかげではあるものの、ワークショップのオーガナイザーやセッション座長の経験もさせていただきました。
右も左もわからず、非常に緊張しましたが、これも社会人博士がなければありえない貴重な経験でした。
③論文の査読
厳密には博士号がなくても査読の依頼は回ってくるのですが、社会人博士時代は仕事と大学の両立でいっぱいいっぱいだったために引き受けられなかったので、卒業後に初めて査読というものをやらせていただきました。
まあ、査読はお金がもらえるわけではないので、デメリットととらえる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分で査読を経験してみることで、自分の論文がどういう見られ方をするのかという視点が身についたような気がします。
いずれも過去の経験が次の機会を運んできてくれるという、それまでの仕事ではあまり経験してこなかった体験になりました。
博士号取得による変化③ 名刺に書ける
今となってはほとんど効力を発揮しないのであまり何も思いませんが、名刺に博士(工学)と書いてもらえたのは地味に嬉しかったです。
それ以外にも、ごくまれに学会等でDr. ○○と呼んでもらえることもあり、ちょっとだけ嬉しかったのを覚えています。完全に自己満ですが。
社会人博士のデメリット
上記のように、いいことはたくさんありますが、社会人博士にもデメリットはあります。
それは、「ストレートで博士課程に進んだ人と比べて出遅れている」という点です。
私の場合、長いこと研究とは遠い業界で働いていたということもあり、同世代あるいは私よりも若い研究者に追いつくためにはかなり頑張らないといけません。
とはいっても、ストレート博士たちとは異なる面で成長しているはずなので、自分にできることをやっていくしかないのですが。
まとめ
本記事では、社会人博士によって、その後どんな変化があったかについてまとめました。
個人的には、今のところいいことばかりですが、唯一デメリットを挙げるとするとストレート博士に出遅れているという点でした。
これを聞くと、「じゃあもう歳だからやめておこう」、「今から始めても無理なのか」と思ってしまいそうですが、一つ言えることは、現時点で迷っているのであれば、早めに行動することをお勧めします。
仮に今40歳でも50歳でも、やってできないことはないと私は信じています。
今から野球選手にはなれなくても、行動することで今よりも満足できる人生にはなると思います。
そんな風に自分に言い聞かせて、自分にできる範囲でもう少し頑張ってみようと思います。