社会人博士の深層学習ブログ

深層学習を使った環境音認識研究で、働きながら博士号を取得しました

【社会人博士】博士号のメリット・デメリット

念願の博士号を取得してから早3ヶ月が経過しました。本記事では、実際に博士号を取得してみて、博士号のメリット・デメリットについて考えてみようと思います。

本記事では、迷っている方の参考になるよう、私が感じたメリット・デメリットをまとめます。

社会人博士のメリット

・収入が安定している

なんと言っても、金銭面の心配がいりません。退職D進される方もたくさんいらっしゃいますが、生活水準を落としたり、貯金を削る必要がありません。最悪、退学してももとの生活に戻るだけです。学費以外はノーリスクです。

ys0510.hatenablog.com

 

・名刺に書ける

自己満足ですが、うれしかったことの一つです。

日本語であれば氏名の下に「博士(工学)」、英語であれば名前の後ろに, 「Ph.D.」と書くことができます。

 

・メールでDr. 〇〇と呼ばれる(こともある)

社内での扱いは何ら変わりませんが、社外の外国の方からのメールにはDr. と書かれることがあります。これも自己満足です。

 

・研究者として見てもらえる(ような気がする)

海外の大学教授と打ち合わせをする機会ありましたが、自己紹介のときに博士を持っていることをお伝えすると、「最低限、研究の経験はあるんだな」とみなされたような気がしました。(実際そう言われたわけではないのですが。。)

少なくとも自分自身のマインドが、

「偉い教授に教えてもらおう」 → 「共同研究を通して実績を積み上げよう」

というマインドに変わっていたことを実感しました。博士号を取得してみてはじめて見えた景色の一つです。

 

・論文が自分の実績として世の中に残る

これは、博士号の有無に関わりませんが、以前の私の職場では論文を書くということができなかったので、博士号取得のために論文を出版できたことは、個人の実績としてもとてもいい経験でした。

会社での仕事はもちろん有意義で価値のあるものですが、対外的に見るとオープンになっていないので、個人としての実績としては見えない部分がありましたので、個人名で何かをアウトプットする貴重な機会になりました。

 

・学会等を通して、社外の人とのつながりができる

 

同じ会社にいることが悪いという意味ではありませんが(私も転職経験ありませんし)、社外の人とつながりを持てるのはすごくいい経験になりました。新しい刺激ももらえますし、先日、とあるミートアップで登壇する機会もいただくことができました。社外の人に知ってもらえているというのは大事なことかと思います。

 

・アカデミックポジションの最低限の応募資格を手に入れられる

企業の基礎研究所や大学教員として仕事を得るには、博士号を持っていたほうが断然有利のように思います。十分な論文があればその限りではないかもしれませんが、そもそも十分な論文があれば、その時点で博士号は取得できます。

「研究に携わりたい」という人にとっては、社会人として博士課程へ進学することはむしろ近道のようにすら感じます。

博士号があったからといって、いいポジションに巡り会えるわけではありませんが、最低限、応募資格は持っているというというのは大きいかもしれません。

 

社会人博士のデメリット

次に、デメリットを挙げます。

が、背中を押してほしい人がこの記事を読んでいると思うので、ここではそれぞれのデメリットに対し、反論もしていきたいと思います。笑

 

・博士課程進学に学費がかかる

 

私は幸運なことに3年間で終了することができましたが、それでも約200万円の費用がかかりました。(入学金や学費、PC等)

でも、たかだか200万円です。車よりも安いですし、生涯年収2億に比べたらたったの1%です。2億円のうちの200万円を節約するか、やりたいことにチャレンジするかと考えたら、私は大した金額ではないと思いました。

 

・休日の時間が潰れる

フルタイムで博士号取得に励んでいる学生がいるなか、仕事での疲れもあるなか土日だけで博士号を取得するのは簡単ではありません。

睡眠時間を削り、土日も実験に励み、お正月も返上で論文を書く。それでも3年では修了できないという人もいるようです。

私の考えですが、睡眠時間を削る必要も無ければ、休日を全部潰す必要もありません。そもそも、そんな無理な生活を年単位で送ること自体が不可能です。私は必ず土日のどちらかは休んでいましたし。8時間ぶっ通しで研究なんてこともやっていません。

大事なのは修了要件を満たすことです。テーマ選びのコツはありますが、基本的には要件達成に関係するところだけを効率的にやっていれば、健康を害す必要はありません。

 

・興味範囲が狭くなる

この分野で博士号を取ったんだ!という自負がどうしても生まれてしまい、それ以外の分野でのモチベーションが下がってしまうことが考えられます。ピッタリマッチする業務があるかどうかはわかりません。(むしろドンピシャのポジションなんてほぼないと考えたほうが良いかもしれません)

たしかにそうかもしれません。それでも、博士号取得で学ぶことは、その分野の知識だけではないと思うので、論理的思考やサーベイ力などは、どの分野に言っても役に立つように思います。博士号を取る過程で、どのような力が身につくかどうかは、経験してみないとわかりません。ただの研究好きと思っている人も多いのですが、他にもたくさんの能力が求められ、論文を書く過程で身についていきます。

 

最後に

博士号は足の裏の米粒だと表現されます。

「取らないと気持ち悪いけど、取っても食えない」

ということだそうです。

私自身もこの言葉が気になってしまい、入学を躊躇してしまいそうになりました。

 

ですが、取って食いたいから博士課程に入学するのでしょうか?

少なくとも、足の裏にご飯粒がついていると感じている人は、一生気持ち悪い思いを抱え、やっぱり博士号を取得しておけばよかったと後悔するリスクを抱えることになります。

 

それから、もう一つ。

博士号を持っていない人に相談することはオススメしません。

「取って何の意味があるの?」

「お金もったいなくない?」

「働きながら3年で取るなんて無理でしょ。」

いろんな人に言われました。

 

悪気があって言っていることではないと思いますが、言われた本人は多かれ少なかれ他人の言葉に影響は受けてしまいます。

 

が、取ってない人には取った人の景色は見えないものです。また、人は自分の知らないことを過小評価する傾向があるそうです。

 

自分が博士号を取ってみたいと素直に思ったのであれば、チャレンジしてみても良いのではないでしょうか。

本当にしんどくなったらいつでもやめられます。はじめて見なければ、どういう世界なのかもわかりません。

参考になれば幸いです!