社会人博士の深層学習ブログ

深層学習を使った環境音認識研究で、働きながら博士号を取得しました

【自己啓発】社会人は何を勉強したら意味があるの?「センスは知識からはじまる」を読んで考える

Content image

なぜ「社会人は何を勉強したらいいの?」と思ったか

社会人になって、自分自身のスキルや価値を高めるために、何か勉強しなきゃと思っていても、何を勉強したら意味があるんだかよくわからない!と思った経験はないでしょうか?

そもそも、運動のセンス、勉強のセンス、ビジネスのセンス、そういったものがないと、結局のところなりたい自分にはなれないのではないかと。。

私はしょっちゅう思ってました。

かなり昔の話ですが、開発していたAGVの回路設計をしていたときの話です。

商品に組み込むための回路を設計するに当たっては、使い勝手の良いコネクタ配置や電子基板のサイズやコストなどを総合的に考えなければいけません。

しかし、入社してすぐだったので、とりあえず教科書的な回路設計に関する本を読んだりもしたのですが、結局出来上がった基板は無駄にデカくなってしまったり、ケーブルが乱雑になってしまい、全然スタイリッシュな商品になりませんでした。結局、経験値を積んでセンスを磨いていくしかないのではないか?と思ったわけです。

当時、勉強といえば、教科書を読むことぐらいにしか思っていなかったので、「良い商品を開発すること」という目的に対しては、大変非効率な勉強法だったのかもしれません。

あれから何年か経ち、書店でこの本を見つけました。「センスは知識からはじまる」というタイトルを見て、あれだけ身につけるのが難しいと思ったセンスも、もしかしたら、知識を増やすことで身につけられるのではないか?と思い、この本を読んでみました。

 

本書「センスは知識からはじまる」の概要

本書をざっくりまとめてしまうと、センスとは膨大な知識を用いて、数値化できないことを最適化することであり、センスを鍛えるためには、知識を増やすことが重要だということです。

非常に読みやすく、サラリーマンとしても考えされる内容でした。また、人工知能や脳科学に興味がある自分にとっても、非常に納得のいく内容でした。

ここでは、特に印象に残った点を、簡単にまとめてみようと思います。

 

そもそもセンスとは何なのか

芸術のセンス、ビジネスのセンスなど、様々なことが「センス」という曖昧な言葉で語られますが、著書である水野さんは、「センスとは、膨大な知識を用いて、数値化できないことを最適化するということ。」と述べています。

例えば、センスの良いインテリアの配置ができる人は、生まれつきセンスがいいというわけではなく、雑誌やお店などから膨大な知識を得ており、その引き出しから最適なものを選択することができるようになっていきます。

クラシック音楽を見ても、時代ごとに特徴が違うように、時代背景やそれより過去の音楽にも大きな影響を受けています。ただ演奏が上手ければいいというものではなく、学問として体系的に音楽を学ぶということは、自身の引き出しを増やすのに意味があることと言えます。

私自身は人工知能を勉強していますが、脳は様々な入力から、複雑に無数のニューロンが反応しあって思考しているそうです。様々な入力というと、目や耳からの外部刺激を想像しますが、実は、自分の脳内からの入力の方が多いそうです。つまり、水野さんが仰るように、過去の経験や知識が多ければ多いほど、自身の脳内のニューロンが複雑に絡み合うようになり、結果としてセンスの良い解を導き出すことができると言えるのではないでしょうか。

また、話はそれますが、よく最適化という言葉が使われます。最適化とは、数学的には「何かしらの評価関数を用いて最適解を求めること」だそうです。本書におけるセンスとは数値化できないものと言っていますが、言語化できないけど、脳内に構築した膨大な引き出しと価値基準をもとに最適化した答えを出しているということで、水野さんの見解も、数学を使った人工知能も、脳科学も同じ答えにたどり着いているような気がします。

 

なぜセンスが重要なのか

センスは運動や芸術だけでなく、ビジネスにおいても非常に重要であるとおっしゃっています。

本書で示されている1つの例はiphoneです。電話も液晶もインターネットも当時からあったものですが、それらを組み合わせたことに価値があります。つまり、先進的な技術ではなく、センスによってイノベーションが起こされた例だと言えます。また、iphoneが爆発的に広まった要因の一つに、細部へのこだわりが挙げられています。具体的には、コストが上がってしまったとしても、質感を高めるために筐体の加工技術に特にこだわりました。

私も含めてですが、日本企業は機能や性能の向上を求めがちになってしまいます。それはそれで大事なことなのかもしれませんが、今はオープンソースと呼ばれる公開されたソフトウェアによって、すぐに真似できてしまう時代なので、機能以外に差別化できるオリジナリティがもっと必要になるように思います。Appleが美意識を重視したように、こだわりや信念が企業や個人の価値を作っていくような気がしています。

 

センスを鍛えるためには

企業がセンスを鍛え、イノベーションを起こすための方法は3つだそうです。
 ①経営者自身がクリエイティブ・ディレクターになる(ジョブズのように)
 ②外部の力を借りる(佐藤可士和さん、水野学さんなど)
 ③社内に特区を作る(サムスンなど)

正直、一従業員にはどれも難しいかもしれません。確かに、③に関しては、「イノベーションのジレンマ」という本でも同じことが書かれており、確かな方法なのかもしれませんが、サラリーマン一人にはすぐに変えられるものではありません。

一方、個人のセンスを鍛える方法は以下の3ステップだそうです。

 ①王道と言われる長く愛されるものを勉強する
 ②一過性の流行を知り、王道との差を知る
 ③どちらでもないものも見つつ、共通項を探す

要するに、王道から一過性の流行まで、幅広く知識を得ないと、最適解を求めるための価値基準が構築されないということかと思いました。私自身、30歳を超えて、ようやく本を読むようになったばかりですが、知識の偏りによるセンス不足状態にならないためにも、普段は読まないような本も読まないといけないなと改めて思わされました。

 

最後に〜センスを高める努力は自身の満足度も高める?〜

ここからは、この本を読んで思った私の考えです。

要するに、この本で言われている知識とは、教科書的な格式張ったものでなくても、自分が見聞きしたり、経験することのすべてを知識と言っています。

電子回路の設計をしていた当時も、実はその後、他社製品をいくつも分解して、自分なりに分析することで、少しずつ回路設計のセンスも磨かれていたのかもしれません。読書という勉強も大事ですが、経験を介して得られる知識も、それ以上に貴重な勉強に鳴っていたんだと気づきました。

 

また、最近、やりたいことが見つからないという若い人が会社に多いように思います。もしかしたらこれも、決められた枠の中の知識しかないからじゃないかと思っています。

私自身がまさにそうで、自分は将来何がやりたかったのか?と仕事について悩んだときがあります。今の仕事の延長上にないのは確かですが、それ以外で自分が何をやりたいのかもよくわかりませんでした。

そんなとき、このまま不完全燃焼感で死ぬのは嫌だという思いだけで、読書やyoutubeなどで情報収集をするようになったところ、不思議とやってみたいことが見つかっていきました。いきなり将来像が見えたわけではありませんが、収集した情報の中から、次に調べてみたいことが出てくるような感じで、続けていくうちに自分の進みたい方向が少しずつ見えてきた感覚です。

知識を蓄えるということは、センスが良くなるということだけでなく、自分の選択肢を広げ、自分で未来を選択したんだという満足感を高めることにもつながるように感じるので、苦手なりにも読書や新しい経験へのチャレンジはしていきたいと思います。

 

本書が気になった方は、ぜひよんでみてください。