この本は、モチベーションや生産性が高い組織(社風)を作るための方法について書かれています。具体的には、紹介されているToMo指数でモチベーションは定量的に評価することが可能であり、しかもその指数で業績まで予測できるようです。
自身がチーム運営を行う場合もそうでない場合も、個人個人のパフォーマンスを高めるために注意すべきポイントは何か、とても参考になりました。
ToMo(トータルモチベーション)指数とは
本書で書かれているToMo指数の測定方法について簡単に説明します。
現在の仕事に関して、以下の1〜6の項目に6点満点で点数付を行い、それぞれ10、5、1.66、-1.66、-5、-10の重みをかけたものを合計します。合計100点満点で、数値が高いほど生産性が高いそうです。
1.楽しさ:業務内容そのものを楽しむことができているか
2.目的:仕事の目的がはっきりしているか
3.可能性:自分自身の将来につながるか
4.感情的圧力:周囲の感情や雰囲気に流されて仕事をしているか
5.経済的圧力:給料のために働いているか
6.惰性:なんとなくダラダラと働き続けているか
ToMo指数から現実の職場について考える
重みの符号からわかるように、1〜3に関しては生産性を向上させるポジティブなモチベーションとなるが、反対に4〜6は生産性を下げるネガティブなモチベーションとなってしまいます。
特に、仕事自体を楽しめるかどうかは、プロジェクトの目的の2倍、自身の将来性の6倍も生産性に寄与するというのは非常に驚きでした。
しかし、多くの管理者は、担当者の楽しさや将来性を重視したマネージメントは行っていないのが現実かと思います。その原因としては、その時の業務の緊急度や工数の必要性など、理由は様々あるのかもしれませんが、そのルーツは大量生産時代の量的管理が背景にあるのでは?と考えています。
大量生産時代の量的管理というのは、以前紹介した「Appleのデジタル教育」にも書かれていますが、大量生産をもっとも効率よく行うには、労働者やその労働を標準化し、その量で管理するという科学的管理法がよいと考えられています。つまり、管理者は、担当者の楽しさやそれによって高まった創造性といった管理のしにくいものではなく、労働時間や生産数といった管理のしやすい量で管理しがちということだと思います。
さらに、本書に書かれていましたが、経営者や管理職は、部下の多くは管理されたがっていると考えているそうですが、実際はそうではないそうです。こういったコミュニケーション不足も、担当者から楽しさを減少させてしまう一つの要因になっているように感じます。
本書の例でも出てきますが、プレッシャーをかけたり金銭的な報酬を与えることも、一時的に単純作業の生産性を向上させますが、ToMo指数に照らし合わせてみれば、感情的圧力や経済的圧力を高めてしまうので、長期的には生産性は下がっていきます。
これは、脳神経科学や心理学でも説明がついて、プレッシャーによってノルアドレナリンが分泌されるので、短期的には集中力が高まりますが、1ヶ月もすれば何も感じなくなってしまいます。金銭的報酬も外発的動機に当たるので、もともと内発的動機があった人も次第にモチベーションが失せていきます。こどもに勉強させるために、お小遣いやご褒美で釣ってはいけないのと同じ理屈です。
まとめ
本書をざっくりまとめてしまうと、プレッシャーかけたりお金で釣っても業績は上がらず、内発的動機を高めましょうということだと思います。
それ自体は、近年ではよく言われることだとは思いますが、この本の実用的なところは、業績に相関のあるToMo指標という数値で判断できる点だと思いました。
特に、会社では定量評価できない曖昧な指標は使いたがらない傾向が強いと思うので、まずは一度社内のToMoを測定してみればよいと思います。簡単なアンケートでToMo指標は測定できるので、なかなか体質の変わらない大企業であっても、組織活性化施策とそれに対するフィードバックに使うことで、組織改革に使えるのではと思いました。
本書が気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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